チェコの大型四重奏団、プラジャーク

<p>&nbsp;チェコの弦楽四重奏団、プラジャーク四重奏団を聴きました(5月25日、日経ホール)。</p> <p>この四重奏団を聴くのは録音、実演を問わず全く初めてですが、彼らが登場してまず目を見張ったのがその体格の大きさです。様々な弦楽四重奏団の実演や映像に接してきましたが、これだけ偉丈夫ぞろいの団体はほとんど記憶にありません。とにかくステージが狭く感じました。</p> <p>もっとも恰幅がいいのは彼らの体格だけではありません。4人が奏でる音楽も実にスケールが大きく、朗々たる響きが会場を覆い尽くします。チェコの四重奏団というと、往年の名四重奏団「スメタナ」にしても、後継者とも言われた「パノハ」にしても渋めの響きでじっくり聴かせるタイプが多かったと思います。プラジャークは世代的にはパノハの少し後ということになるのでしょうが、チェコの四重奏団の系譜では異色の存在と言えるのかもしれません。</p> <p>また、4人の技量が接近し、バランスがとれているのが先輩諸団体の特徴だったように思いますが、プラジャークの場合はヴィオラ、チェロの力量が相対的に目立ちます。これらの中低弦楽器を軽々とに弾きこなしているように聴こえるのは、あながち楽器が小さく見えたせいだけではないでしょう。この日のプログラムは全てチェコの名曲ばかりでしたが、一曲目、スメタナ第一番の第一楽章と二曲目、ドヴォルザークの「アメリカ」第一楽章、いずれもヴィオラの力強いソロで幕を開け、また後半のドヴォルザークのピアノ五重奏曲第二番はチェロの牧歌的なソロで始まります。つまりヴィオラ、チェロ奏者の実力が遺憾なく発揮されたプログラムでした。</p> <p>ドヴォルザークの室内楽曲の表現様式として、朴訥、素朴なローカル色を打ち出すものを民族派とし、より自由に歌を前面に出すものを西欧派とあえて定義すると、民族派の代表がスメタナ四重奏団、西欧派の代表格がアルバン・ベルク四重奏団、そしてプラジャークは中間派と言えるかもしれません。</p> <p>それにしてもこの日のプログラムを聞き進めて痛感したのはドヴォルザークの室内楽曲の素晴らしさです。「アメリカ」がとびきりの名曲であることは言うまでもありませんが、ピアノ五重奏曲の明快な構成、緩急自在な楽想、民族色あふれる親しみやすい旋律(第二楽章「ドゥムカ」、第三楽章「フリアント」をはじめ)、魅力的な楽器構成、この編成の五重奏曲でまず指折るべき存在との思いを強くしました。第四楽章の終わり近くでテンポをぐっと落としてから第一主題をtranquilloでしみじみと回想するくだりは思わずほろりとさせられる、実に心憎い演出です。</p> <p>一夜を通して、アンコールのシューマンの五重奏曲(第三楽章)が無用に聴こえるほど、チェコの名手たちによるチェコの名曲を堪能しました。唯一不満だったのは、チケット購入が遅れた為にあまりいい席がとれず、一番見たいチェロ奏者が大柄なヴィオラ奏者に隠れてほとんど見えなかったことくらいです(笑)。</p> <p>この日のコンサートは「日経ミューズサロン」の第400回演奏会でした。このシリーズは比較的安価な料金で実力派の演奏を聴けるのが売り物です。長年よく続いていることに素直に拍手を送りたいと思います。</p>